まずは基本の構成から
楽曲の基本的な構成について、おそらく「Aメロ」「サビ」などという言葉は誰でも何かしら聞いたことはあると思います。
よくある構成としては以下のようなものです。
1番:Aメロ Bメロ サビ
2番:Aメロ Bメロ サビ
3番:Cメロ サビ
もちろんこの通りの構成ではない楽曲も数多いですし、また「Cメロ」は「落ちメロ」と呼ぶこともあるなど、人によって多少、表現は違います。
Aメロの中でもいくつかのメロディに分かれたりもしていますが、作詞をする上では、1つのまとまったメロディの中では複数の内容を詰め込まず、1つのシチュエーションとした方が良いとされています。
その方が聴き手に伝わりやすいからです。
米津玄師さんの「Lemon」を例に挙げると
夢ならばどれほどよかったでしょう
未だにあなたのことを夢にみる
出典:『Lemon』作詞/米津玄師 作曲/米津玄師
これでメロディが1つのまとまりになっており、詞の内容も一区切りつきます。そして次に、
忘れたものを取りに帰るように
古びた思い出の埃を払う
出典:『Lemon』作詞/米津玄師 作曲/米津玄師
という歌詞が続く、というわけです。
「Lemon」の歌詞は米津さん独自の世界観で表現されていて、心を揺さぶられるものがあります。
ですが「メロディのひとまとまりには1つのシチュエーションとする」という観点からすると、楽曲の最初から最後までほぼこの構成となっておりセオリー通りです。
複数のエピソードを短い言葉で列挙する
ただ、歌詞として伝えたいことがこの基本的な構成通りには当てはめづらい、というようなこともあるかと思います。そのときはあえて、ひとまとまりのメロディの中に複数のエピソードを羅列してみてはどうでしょうか。
西野カナさんの「トリセツ」では、女の子の理想をリズミカルに列挙しています。
たまには旅行にも連れてって
記念日にはオシャレなディナーを
柄じゃないと言わず カッコよくエスコートして
広い心と深い愛で 全部受け止めて
出典:『トリセツ』作詞/Kana Nishino 作曲/ DJ Mass (VIVID Neon*)、Shoko Mochiyama、etsuco
またこちらは筆者が好きな曲なのですが、BUMP OF CHICKENの「魔法の料理~君から君へ~」。ボーカルの藤原基央さんの、幼少期の実体験を元にして作られた曲です。
確か 赤だった筈だ三輪車 どこまでだって行けた
ひげじいがくれた熊は よく見たら犬だった
プラスチックのナントカ剣で 傷付けたピアノ
模様のつもりだった 好きになろうとした
出典:『魔法の料理~君から君へ~』作詞/藤原基央 作曲/藤原基央
いくつものエピソードが出てくるにも関わらず、歌詞が分かりづらい印象はありません。
情景が自然と浮かんできます。
歌詞の中に具体的なエピソードが盛り込まれることで、より歌詞が生き生きとしてきます。
メロディは区切りがあっても歌詞は続いているパターンも
逆に、メロディは区切りがあるのに歌詞は続いているパターンもあります。
あいみょんの「マリーゴールド」。1番では、Aメロの後半からBメロにかけてシチュエーションが続いています。
でんぐり返しの日々
可哀想なふりをして
だらけてみたけど
希望の光は
目の前でずっと輝いている 幸せだ
出典:『マリーゴールド』作詞/あいみょん 作曲/あいみょん
BUMP OF CHICKENの「天体観測」は、1番のBメロからサビが続いています。
深い闇に飲まれないように 精一杯だった
君の震える手を握ろうとした あの日は
見えないモノを見ようとして
望遠鏡を覗き込んだ
出典:『天体観測』作詞/藤原基央 作曲/藤原基央
「天体観測」ではさらに、「午前二時」「二分後」「あの日」という時を表す言葉も時々織り交ぜながら、過去のことと現在のことが複雑に入り組んでいます。
それにも関わらず、聴き手にはすんなりと感覚的に歌詞が入ってきて、改めて素晴らしい歌詞だなと思いました。
とはいえ、始めに「Lemon」を紹介したように、セオリー通りの構成にしても人の心に届くような歌詞は作ることができます。
構成について意識して自分の好きな曲を今一度聴いてみると、その曲の新たな魅力に気付くかも知れません。